要点Q&A
デモの評判が良かったのに、日本の検討が静かになるのはなぜですか?
日本企業では、評価を進めている人が購入を承認する人であることはほとんどないからです。前に進めるには、調達・法務・情報システム・自分の上司に向けて、こちらが渡した材料で社内の説明を組み立てなければなりません。その説明が依存しているページが英語のままなら、そのままでは回せません。残るのは、自分の名前で無償の翻訳作業をするか、待つかです。多くの人は前者を選びません。待っているうちに、案件は「断られる」ことなく止まります。
ヘルプセンターと規約を全部日本語にしないといけませんか?
その必要はありません。むしろ「全部」を前提にすると、この課題は永久に先送りされます。日本のバイヤーの社内を実際に移動するページは、ごく一部です。評価対象の業務に対応するヘルプ記事が数本、利用規約、データの取り扱いとセキュリティのページ、そしてサポートが最後に返した文面。その範囲を特定して、そこだけを本物の日本語にしてください。裾野は後回しで構いません。

この記事の要約

日本での検討が順調に進み、そして静かになる。異議も、値引きの要求も、断りの言葉も出てこない。実際に起きているのは商談の失敗ではなく、手続きの停止です。評価する人は、決める人ではない。前へ進めるには、調達・法務・情報システム・上司の受信箱まで製品を運んでもらう必要があり、その人が運べるのは「回せるもの」だけです。トップページは日本語になっている。けれど連携の疑問に本当に答えているヘルプ記事、利用規約、セキュリティとデータの取り扱いのページは英語のままです。だから社内の説明は組み立てられず、その理由がこちらに届くこともありません。打つべき手は全部を訳すことではなく、社内に回る8〜10ページを特定して、それを「最初から日本語で書かれたもの」として仕上げることです。

この記事の要点

「ノー」と言われないまま終わる検討

くり返し見る形があります。デモの反応は良い。日本のチームは、ほかの見込み客より鋭い質問をしてくる——データの保管場所はどこか、ログはどう扱われるのか、権限モデルのこの境界はどうなるのか。トライアル環境を渡すと、2週間、実際にきちんと使ってくれる。そして「社内に持ち帰って確認します」と言われ、会話が終わります。

その後のフォローには、丁寧な返信が来ます。「社内で確認中です」。3か月後、推してくれていた担当者は別のチームに移っているか、予算は別のところへ行っています。記録できる失注理由はありません。何も失われていないからです。検討が、ただ止まったのです。

この流れは、私が日本参入の支援で何度も見てきたパターンを合成したものです。特定の顧客の事例ではありません。

評価する人は、決める人ではない

欧米のパイプラインでは、評価を進めている人が購買権限を持っているか、権限を持つ人まで会話ひとつで届くことが少なくありません。日本企業では、規模を問わず、たいていそうなっていません。評価は判断材料のひとつです。決定は組み立てられます。文書に書かれ、順に回覧され、稟議として承認されていく。そしてその手前には、関係者ひとりずつへの根回しがあります。日本で反対意見が出るのは、こちらが同席していない場所だという話は、ここにつながります。

この構造は、コンテンツの役割そのものを変えます。セルフサーブの市場では、ドキュメントの仕事は読者の疑問に答えることです。日本では、同じドキュメントに、誰も事前に説明してくれないもうひとつの役割があります。転送できることです。それは添付ファイルになり、貼り付けられた一段落になり、社内申請のなかのリンクになります。そして、こちらのサイトを一度も訪れたことのない4人が、それを読んで、承認して差し支えないと感じなければなりません。

最初に着手されるローカライズ作業のほとんどは、この二番目の仕事を狙っていません。

転送テスト

日本語のページを「効くもの」と「飾り」に分ける質問がひとつあります。推してくれている担当者が、今日の午後、このページをそのまま法務部に送れるか。

「日本語対応済み」とされているサイトでこれを試すと、答えは申込みの地点で急に変わります。デモ申込フォームまでは全部通る。その先は全部落ちる。そして承認者が読むのは、その先だけです。

実務で見ると、回されるページの構成はかなり安定しています。

転送テストを一行で言うと:クリックより手前は自社のマーケティング。その先は、他人の社内資料になる。

英語のページは却下されない。先送りされる

英語のセキュリティページを手にした担当者が、日本の承認プロセスに向き合っている場面を思い浮かべてください。選択肢は3つです。

そのまま回す。関わることを望んでいなかった4人に、宿題が配られます。申請は「仕上がっていないもの」として届き、そして——本社から見えにくいのはここですが——回した本人が、自分の仕事をしていないように見えます。

自分で訳す。無償で、夜に。しかも終わったときには、こちらが書いていない、本人が検証もできない文言で、セキュリティと契約上の約束の正確さを自分が保証したことになります。実害の可能性があり、見返りはありません。

待つ。これには一切コストがかかりません。だから、これが起きます。

注目してほしいのは、この連鎖のなかで誰ひとり、これを「言語の問題」として語らないことです。社内から見れば、「これには日本語の資料が必要ですね」はベンダーに言うべき異議ではありません。申請書を書かずに置いておく、社内向けの理由にすぎない。そしてそれが、もう少し、もう少しと延びていきます。

英語力の問題でもありません。CSA Research が2020年に発表した調査「Can't Read, Won't Buy」——29カ国・検証済み回答者8,709人——では、日本の回答者の90%が自国語での製品情報を求めており、29カ国全体の76%を上回りました(出典:CSA Research, 2020)。これは消費者調査なので、調達の統計として飾ってはいけません。それでも確かに示しているのは、この選好が日本では世界平均より強く出るということです。承認の連鎖のなかでは、同じ選好はさらに強く働きます。読んでいる人は、買うかどうかを決めているのではなく、その書類に自分の名前を載せるかどうかを決めているからです。

全部を訳す必要はない

この問題が何年も生き延びる理由は、正直な解決策が巨大に聞こえることです。ヘルプ記事400本。規約の全ページ。日本語サポート。だから「日本が立ち上がってから」に予定され、その立ち上がりは、先送りしたものを解かないと来ません。

けれど、回されるページは400本ではありません。多くの場合8〜12本です。日本のパイプラインは強く収束するからです。同じ3つのユースケース、同じ2つの連携、同じセキュリティチェックシート、法務が動かしたがる同じ条項。範囲に名前をつけられれば、作業は2週間で、年度単位の話ではなくなります。

現実的な順序はこうなります。

  1. セキュリティとデータの取り扱い、そして署名に応じられる範囲。情報システムと法務はもっとも硬いゲートで、しかももっとも早く現れます。
  2. 利用規約とプライバシーポリシー。逐語の置き換えではありません。規約に対して日本の法務読者が期待する文体は、それ自体が別の技術です。
  3. 日本のユーザーが実際に開いているヘルプ記事5〜6本。どれかは自社の分析ツールがすでに知っています。ナビゲーションでの位置ではなく、アクセス数で並べてください。
  4. サポート返信の日本語化。少なくとも評価期間中は。返信は書類です。書類として転送されます。

ここで、翻訳とローカライゼーションの違いが、マーケティング上の言い分ではなく金額の話になります。セキュリティページの機械翻訳は10秒ほどで終わり、おおむね正しく出てきます。同時に、機械翻訳だと分かる文章としても出てきます。そしてそう読めてしまうページは、推してくれている担当者が自分の名前の入った表紙をつけて添付しないページです。それは、こちらの評価ではなく本人の判断力の問題として見えるからです。日本語の読者は、ニュアンス・文法・改行が手当てされていないページから静かに信頼を引き上げます。社内の承認者は、その中でもいちばん容赦がなく、そして案件の行方を決める唯一の読者です。

自社の「回されるページ」を特定する

確認は3つ。新しいツールは要りません。

関係の良い担当者に、何を送ったかを聞く。社内にはどのページを共有しましたか。説明が必要だったものはありましたか。交渉の質問ではないので、人はこれに素直に答えてくれます。返ってくるのは、たいてい「考えたこともなかった1ページ」と「誰も読んでいないと思っていた1ページ」です。

片付けてしまった日本語のサポート問い合わせを読み返す。「この資料の日本語版はありますか」は、優先度の低いコンテンツ要望として記録されがちです。その多くは、止まった検討が、可能なかぎり丁寧な形で声を上げている場面です。

失注理由ではなく、日本の案件が止まる場所を見る。技術検証のあと、契約の手前で毎回静かになるなら、詰まっているのは承認の連鎖であって、製品でも価格でもありません。

あの静けさが伝えていたこと

理由なく止まる検討は、いちばん高くつくフィードバックです。何も起きていないように見える形で届くからです。答えるべき異議もなく、押しのけるべき競合もいない。案件は予測から静かに外れ、誰かが「不成立」と書き、次の案件でも同じことが起きます。

昨年の日本案件から、失注理由が記録されていないものだけを抜き出してみてください。そして1件ずつ、そのバイヤーは何を社内に回さなければならなかったか、そしてそれは何語で見つかったのかを問い直してみてください。答えが毎回「英語」なら、負けていたのは製品ではありません。丁寧で、好意的な人たちに、こちらのドキュメントの翻訳を代わりにやってくれと頼み続けていて、その人たちは何も言わずに断っていたのです。

Japan Readiness Checkでは、社内の承認者が読む順路——最初のクリックからセキュリティページ、規約まで——をたどって、バイヤーがどこで「推せなくなる」のかを報告します。

よくある質問

評価が順調だったのに、そこから連絡が止まるのはなぜですか?

評価は終わったのに、承認が始まっていないことが多いのです。日本企業では、製品を試している担当者と、購入を決められる人が同じであることはほとんどありません。前へ進めるには、調達・法務・情報システム・自分の上司に向けた社内資料を、こちらが渡した材料で組み立てる必要があります。その材料が英語のままだと、そのままでは回せません。担当者に残る選択は、自分で訳すか、待つかの二択です。待つことには何のコストもかからないので、たいていは待つほうが選ばれ、案件は「断られる」ことなく止まります。

数ページしか日本語化できない場合、どこから手をつけるべきですか?

アクセスが多いページではなく、社内に回されるページから始めてください。具体的には、セキュリティとデータの取り扱いに関するページ、利用規約とプライバシーポリシー、評価対象になっている業務に対応するヘルプ記事が数本、そして評価期間中のサポート返信です。トップページと価格ページは目に触れる回数が多いので最初に訳されがちですが、社内の承認者が読む書類ではありません。

相手が英語を読めるなら、それで解決しませんか?

読む問題は解決しますが、回す問題は残ります。窓口の方が英語に不自由がなくても、その人が説得しなければならない4〜5人は、自分から関わることを選んだわけではありません。英語の添付は、その全員に「返答する前にひと仕事」を求めることになります。もうひとつは個人のリスクです。担当者がセキュリティや契約上の約束を自分の言葉で日本語に言い換えれば、こちらが書いていない文言について本人が保証したことになります。多くの人はそれを、異議として口に出すのではなく静かに避けます。

ヘルプセンターや規約は機械翻訳で済ませてよいですか?

アクセスの少ない記事の裾野については、機械翻訳+軽い確認で十分に合理的です。社内の承認依頼に添付されるページについては、まったく合わない選択です。機械翻訳の出力はおおむね正確で、同時に機械翻訳だとはっきり分かります。そう読めてしまう資料を回した人は、同僚の前で雑な仕事をしたように見えます。日本語の読者は、ニュアンス・文法・改行が手当てされていないページから静かに信頼を引き上げます。社内の承認者は、そのなかでもいちばん容赦のない読者です。

これが自社の問題かどうか、どう見分けますか?

失注理由ではなく、案件が止まる場所を見てください。技術検証のあと、契約の手前でまとまって静かになり、丁寧な返信は来るのに具体的な異議は出てこない——それなら、詰まっているのは承認の連鎖である可能性が高いです。確認は2つで足ります。関係の良い担当者に「社内にはどのページを共有されましたか。説明が必要だったものはありましたか」と聞くこと。そして日本語のサポート問い合わせから「この資料の日本語版はありますか」という依頼を探すことです。後者は優先度の低い要望として処理されがちですが、止まった案件がもっとも丁寧な形で声を上げている場面です。