Quick Answers
英語の提案書を訳して出すと、なぜ日本のRFPで評価されにくいのですか
日本のRFP、とくに公共調達では、評価項目と配点、回答に使う様式があらかじめ示されることが多く、評価者はその項目順に提案書を読みます。定型提案書の翻訳は自社の構成のままなので、どの要件への答えかを評価者が探せません。必須要件への回答があいまいだと、提案全体が失格になる設計の案件もあります。
日本のRFPへの回答はどう作ればよいですか
発注者が配布した様式をそのまま使い、提案書の見出しを評価基準の番号に合わせます。要件ごとに、RFPが定める対応区分と1〜2文の説明、根拠ページを1行で示し、対応できない点や代替案も隠さずに書きます。日本語の会社概要、類似実績、体制図、指定様式の見積も揃えます。

TL;DR

本国の提案書を訳して出すのはやめ、発注者の様式と評価基準から組み立て直すのが近道です。要件には1行ずつ、RFPが定める記号で答え、根拠のページを示します。代替運用や対応不可の項目も正直に書きます。質問期間を使ってあいまいな点を確かめます。会社概要・類似実績・体制図・円建ての見積は、指定の様式で日本語で用意します。

Key Takeaways

評価者は「探さないと見つからない答え」に点をつけにくい

海外SaaSの定型提案書は、読み手を説得する流れで作られています。エグゼクティブサマリー、会社のストーリー、プラットフォームの概要、セキュリティ、導入企業のロゴ、価格。英語で読めばよくできていますし、丁寧に訳せば日本語でも読める文書になります。問題は言葉ではなく、並び順です。

日本側で提案書を読む担当者の手元には、たいてい配点つきの評価項目一覧があります。担当者はその一覧を上から順に見て、「3-2への回答はどこか」「次は3-3」と探していきます。富山市上下水道局のある案件の作成要領では、提案書の項目名と項番を評価基準の番号に合わせること、ページ番号とインデックスを付けることを求めています(富山市)。評価表と提案書を並べて読むための指定です。

訳しただけの定型提案書は、この評価表のどこにも対応していません。3-2への答えは、プラットフォーム概要と付録に分かれて書かれているかもしれません。しかし評価者が探さなければ見つからない答えは、どうしても点が低くなりがちです。

日本のRFPは、書く前に「何を見るか」を教えてくれる

国の情報システム調達では、ルールが明文化されています。デジタル庁の標準ガイドライン(DS-100)は、総合評価落札方式で調達する場合、提案依頼書に原則として、RFPの内容(提案書の記載要領、実施体制、実施計画など)、提案の手続、評価基準(価格点と技術点の配点、評価事項、評価方法)、審査の手法(プレゼンテーションや質疑など)を記載するよう定めています(デジタル庁 DS-100、第3編第6章)。必須事項のうち最低限の要求を合否判断の基礎点とし、そのうえで加点する設計です。審査では、要件定義を的確に理解した提案か、実現性があるかが問われます。

自治体の資料を見ると、実際の形がよく分かります。横浜市のあるデジタル調達案件では、評価項目ごとの配点と評価の着眼点が事前に公開され、項目ごとに2〜5段階(A〜E)で評価し、点数に換算する方式でした。事業実績、プロジェクト管理者やチームリーダーの体制、機能要件、セキュリティ管理(個人情報保護)、プロジェクト体制図が、それぞれ独立した評価項目になっています(横浜市)。長野市の公募型プロポーザルでは、機能要件一覧、提案依頼書と要件定義書への質問書、提案書表紙、類似業務実績書、経費内訳がエクセル形式の様式で配布されています(長野市)。

いずれも個別の案件の文書で、全国共通の様式ではありません。配点やページ数、記号の意味は発注者ごとに違うので、案件ごとに読み込む必要があります。共通しているのは、何を評価し、どこに答えを書けばよいかを、発注者が事前に示している点です。

民間企業のRFPについては、標準を定めた公的機関や業界団体の資料は見当たりませんでした。私たちが見てきた範囲では、要件一覧への行単位の回答、会社概要、類似の導入実績、体制、見積を求めるなど、行政調達に近い形をとる企業が少なくありません。ただしこれは観察であってルールではないので、手元のRFPの指示を優先してください。

要件一覧は1行ずつ採点される

海外ベンダーが日本のRFPで最も戸惑うのが、要件ごとの対応可否を答える一覧表です。機能要件が1行に1つずつ並び、それぞれに記号で答えるよう求められます。

札幌市のネットワーク調達の総合評価基準書がわかりやすい例です。必須の機能要件1件ごとに、A(標準機能で適合度が高い)、B(オプションや代替運用で、市が許容できる)、失格(適合しない、または代替が許容できない)で採点します。必須要件をすべて満たした提案だけが加点評価に進み、質問への回答で根拠や実現方法が不明確な場合も失格になりえます(札幌市)。

富山市の作成要領は、様式の扱いがさらに厳格です。機能要求回答書は行・列の追加や削除が禁止され、各機能にA(パッケージ標準で対応、カスタマイズ不要)、B(組み込みまたはカスタマイズで対応)、C(代替対応)、D(対応不可)の記号で答え、Dの回答は大幅な減点対象です。提案書に事業者名やシステム名を書かない匿名審査の指定もあり(富山市)、ロゴを前面に出した本国の資料はそもそも使えません。

英語の提案書でよく見る "Yes, our platform is highly configurable." は、営業の答えとしては自然です。しかし日本の回答書の上では、それが標準機能なのか、有償オプションなのか、カスタマイズ案件なのかが分かりません。評価者は推測するか質問するしかなく、どちらも提案者に有利には働きません。

合成した例(実在の案件ではありません)

要件:利用者の操作ログを1年間保存し、CSV形式で出力できること。

Before(定型提案書の翻訳)

当社の柔軟な監査機能は、業界最高水準のコンプライアンス要件に対応しており、多様なエクスポート形式をサポートしています。詳細は付属資料をご参照ください。

After

【対応区分】A(標準機能)
操作ログは標準で13か月保存します。管理画面[監査ログ]→[エクスポート]からCSV形式で出力できます。(提案書 p.18、画面例 p.19)

ポイント:RFPが求める対応区分を最初に書き、要件の2つの条件(保存期間と出力形式)に1行で答え、確認できるページを示しています。Beforeは、要件を満たすのかどうかを一度も言っていません。

回答の作り方

指定様式は崩さない

要件一覧がエクセルで配布されたら、エクセルのまま返します。画像にして提案書に貼る、セルを結合する、独自の「備考」列を足す、見出しを書き換える、といった加工はしません。提案書の章立ては評価基準の番号に合わせます。その結果、会社紹介が後ろのほうに回っても構いません。ページ数や用紙サイズの指定があれば、上限として扱います。

要件1つに、1行と根拠ページ1つ

各行には、RFPが定める対応区分、要件をどう満たすかを1〜2文、評価者が確かめられる提案書のページを書きます。区分の定義はよく読んでください。「管理者が設定で変更できる」を標準機能とみなす案件もあれば、初期状態から手を加えるものはすべてカスタマイズとする案件もあります。

「対応不可」「代替案」を隠さない

すべてを「標準対応」にしたくなる気持ちは分かります。けれども標準と代替を区別して採点するRFPでは、具体的な代替案(誰が、何を、いくらで行うか)を添えた正直なBのほうが、質疑で崩れるAより安全です。札幌市の基準では、質問への回答で根拠が不明確なこと自体が失格の理由になりえます。対応できない要件は、RFPが用意した区分でそう書き、代わりに何を提案するかを説明します。

質問期間を使う

公共のRFPでは、書面で質問できる期間が設けられ、長野市のように質問書の様式が指定されることもあります。DS-100では、重要な回答は全事業者に通知することになっています。要件の意味、国外リージョンのクラウドを使ってよいか、英語の添付資料を認めるかなど、あいまいな点はここで確かめます。質問は明確な日本語で、1問に1つの論点に絞って書きます。

添付資料は日本語で揃える

評価されるのは製品だけでなく、体制と計画もです。法人格・所在地・日本の窓口を明記した日本語の会社概要、指定様式に沿った類似実績(できれば国内または近い業種)、役割と日本語で対応する担当者が分かる体制図、スケジュール、発注者の経費様式に沿った円建ての見積を用意します。横浜市の例のように、個人情報保護やセキュリティ管理が独立した評価項目になる案件もあるので、該当する章を分けておくと評価者が読みやすくなります。

米国の提案評価との違い

「米国のRFPは自由に書ける」というわけではありません。米国連邦調達規則(FAR)の統一契約様式でも、提案者への指示(Section L)と評価要素(Section M)は独立した章として置かれます(FAR 15.204-1)。価格は必ず評価され、過去の実績や技術力などの非価格要素もあわせて見ます(FAR 15.304)。評価はRFPに書かれた要素だけに基づいて行います(FAR 15.305)。要件適合表(compliance matrix)を求める米国のRFPも珍しくありません。(FARの条文は2026年10月時点でacquisition.govに掲載されている内容です。)

違いは様式と細かさにあります。FARは、形容詞・色・数値・順位など評価の方法を機関に委ねており、強み・欠陥・リスクを記録して総合的に判断する余地が大きい仕組みです。一方、上で見た日本の公共調達の資料では、配点を事前に公開し、固定の回答書を配り、要件を1行ずつ採点し、加点の前に必須要件の合否を置く例が目立ちます。Section L・Mに沿って説得力のある文章を書くことに慣れたチームほど、「様式に答える」書き方への切り替えが必要になります。

提出前のチェックリスト

  1. RFPが求める様式がすべて揃っている。配布時のファイル形式のままで、行・列・見出しを変えていない。
  2. 提案書の章番号が評価基準の番号と一致している。指定があればページ番号とインデックスも付けた。
  3. 要件一覧のすべての行に、RFPの定義どおりの区分、短い説明、根拠ページがある。
  4. B・代替運用・対応不可の行には、具体的な代替案がある。追加費用は見積に反映した。
  5. 質問期間に質問を出し、他社の質問への回答も読んで反映した。
  6. 会社概要・類似実績・体制図・スケジュール・見積が、日本語かつ指定様式になっている。
  7. ページ数・用紙サイズ・匿名審査のルールを守っている。社名やロゴを書いてはいけない箇所に書いていない。
  8. 日本語に堪能な人が全体を通して読んだ。提案書・回答書・見積の間で用語が揃っているかも確認した。

出典

よくある質問

英語の提案書に日本語訳を添えて出してもよいですか

RFPが認めている場合に限ります。認められていても、採点される回答は発注者の様式に日本語で書くのが前提です。言語や添付資料について記載がなければ、自己判断せず質問期間に確認してください。

民間企業のRFPも、行政と同じ形式ですか

民間のRFPに公表された標準はありません。私たちの経験では、要件一覧、会社概要、類似実績、体制、見積を求めるなど似た形をとる企業が多いものの、細部は会社ごとに違います。手元のRFPの指示だけをルールとして扱ってください。

設定で変更できる機能は「標準」と「カスタマイズ」のどちらで答えるべきですか

RFPに書かれた区分の定義に従います。定義は発注者ごとに異なります。自社製品にどちらが当てはまるか判断がつかない場合は質問期間に確認し、回答欄には設定の内容と誰が作業するのかを具体的に書いてください。

対応できない要件は、空欄にしておくほうがよいですか

いいえ。空欄は採点できず、見落としと受け取られます。RFPが用意した区分で対応不可と明記し、提案できる代替案を添えてください。必須要件を1つでも満たさないと失格になる案件もあるため、応募を決める前にどの行が必須かを確認しておくことをおすすめします。