Quick Answers
海外ベンダーからの最初の返信は、日本企業で誰が読みますか
問い合わせた担当者に加えて、その担当者が転送する相手です。上長、情報システムや法務の担当者、のちに購入を決裁する人たち。日本企業の購買は複数の人で決めるのが普通なので、元の問い合わせを見ていない人が読んでも分かる返信にしておく必要があります。
最初の返信は日本語で書くべきですか
問い合わせが日本語で来たのなら、日本語で、ネイティブの確認を通して返すのが基本です。それができない場合は、機械翻訳のような日本語より、短く明快な英語のほうが安全です。

TL;DR

最初の返信は転送される前提で書きます。両社名と用件が分かる件名にし、会社名・部署名・氏名+様の宛名から始め、日本の読み手が期待する定型句を入れ、敬語は過不足のない水準でそろえます。誰がどこにいるのか分かる署名で締め、日本の営業日のうちに受領の一報を入れ、日本時間の日程候補を2〜3つ、日本語1枚の資料と一緒に出します。

Key Takeaways

最初の返信は、転送される

日本企業で問い合わせフォームに入力する人は、決める人ではないことが多いものです。上から「このジャンルのツールを調べておいて」と頼まれた担当者かもしれませんし、自分で見つけて、先に進める前に上長に見せる必要がある人かもしれません。どちらにしても、御社の返信を受け取って最初にすることの一つが「共有」です。導入が進めば、のちに複数の人を回る稟議が必要になります(詳しくは日本の調達プロセスを通す:稟議・請求書・書類の実務)。最初の返信メールは、その稟議の束の一枚目になることがよくあります。

そう考えると、良い返信の形が変わります。英語圏でよくある「Thanks for reaching out! カレンダーのリンクはこちら」型の返信は、問い合わせへの返事としては成立していても、転送された上長には何のことか分かりません。誰が、何を聞かれて、何を提案しているのかが書いてあるメールなら、添え書きなしでそのまま回せます。

まず件名です。相手がメールで連絡してきたなら、件名は変えずにそのスレッドに返信します。フォーム経由の問い合わせなら、それ単体で用件と社名が分かる件名を付けます。

件名:〇〇に関するお問い合わせへのご回答(Acme Payments)

本文の冒頭も同じ役目を負います。問い合わせへのお礼と、何についての問い合わせだったかを一文で書いておきます。

宛名は、本文より先に読まれる

日本のビジネスメールは、挨拶の前に相手の会社名・部署名・氏名を1行ずつ書くところから始まります。最初の返信では省略せず、問い合わせ本文や相手の署名にあるとおりに書きます。

株式会社〇〇 営業企画部 山田 太郎 様

細かいところほど見られます。顧客には「さん」ではなく「様」。担当者名が分からず会社や部署宛てにするときは「御中」で、「御中」と「様」は併用しません。本文中で呼ぶときも「山田様」と姓+様で、英語の感覚で「太郎様」としないこと。そして、相手の氏名と社名の漢字は、相手自身のメールと必ず突き合わせてください。名前の字の誤りは日本の読み手が真っ先に気づく間違いで、いちばん見過ごしてもらいにくい間違いでもあります。

相手がCCに同僚を入れている場合は、宛名の下に「(CC:同部 佐藤様)」のように書き添える書き方もよく使われます。ほかに誰が読んでいるかが一目で分かります。

定型句が果たしている役割

日本のビジネスメールには決まった書き出しと結びがあり、言葉どおりの意味はそれほど持っていません。役目は「きちんとした業務連絡です」という合図です。読み手は読み飛ばしますが、無いときだけは気づきます。

問い合わせへの返信なら、書き出しは問い合わせへのお礼と名乗りが自然です。

このたびは弊社サービスについてお問い合わせいただき、誠にありがとうございます。 Acme Payments で日本市場を担当しております、ジョン・スミスと申します。

2通目からは「お世話になっております」が標準の書き出しになります。結びは「何卒よろしくお願いいたします」「引き続きよろしくお願いいたします」。英語にぴったり対応する表現がないため、海外の本社が書いた文面では抜けがちですが、これが無いとメールが途中で切れたように終わります。日本側のメンバーが本社の文面をチェックするときは、まずここを見てください。

自分の名前は、読んでほしい形で書きます。「ジョン・スミス(John Smith)」のようにカタカナと英字を併記しておけば、相手は会議で名前を正しく呼べますし、受信箱で検索もできます。

敬語はどこまで丁寧にするか

敬語は、足りなくても過ぎても違和感が出ます。足りない例は、顧客への「了解しました」や、「だ・である」で終わる文。過ぎる例は、すべての文に付く「させていただきます」や、「おっしゃられる」「拝見させていただきます」のような二重敬語で、注意深い読み手には「無理をしている」「自動生成っぽい」と映ります。

目指すのは、落ち着いた普通の丁寧さです。文末は「です・ます」でそろえ、了解は「承知いたしました」、依頼は「ご確認ください」「ご確認いただけますでしょうか」、自社は「弊社」、相手の会社は書き言葉なので「貴社」。丁寧語と普通体の使い分けはプロダクトの文言でも同じ問題が起きます。敬語か普通体か?SaaSプロダクトの日本語敬語レベルの選び方もあわせてどうぞ。

機械翻訳っぽさが出る場所

英語で書いてソフトで訳したメールは、日本の読み手にはかなりの確率で分かります。目印になるのは、だいたい次のあたりです。

こうしたパターンはその日本語、間違ってません。でも、そこが問題じゃないんです。で詳しく取り上げています。

署名も回答の一部

聞いたことのないベンダーのメールが転送されてきたとき、上長が「実在する会社か」を確かめる場所が署名です。日本のビジネスメールの署名には、通常、会社名、部署・役職、氏名、住所、電話番号、メールアドレス、Webサイトが入ります。

―――――――――――――――― Acme Payments Inc.(アクメ・ペイメンツ) 日本事業担当 ジョン・スミス(John Smith) 〒000-0000 東京都〇〇区〇〇 0-0-0 TEL:+81-3-0000-0000(日本時間 9:00〜18:00) Email:[email protected] https://www.example.com/ja/ ――――――――――――――――

日本法人があるなら日本法人名を使います。日本に拠点がない場合は、本社の住所と、日本時間で何時から何時まで対応できるかを書きます。住所が無い署名は、何かを隠しているように見えます。日本語のページがあればWebサイトの行はそちらに。英語の長い機密保持の注意書きは短くしてください。末尾の長い英文も「外国のメールだ」という印象を強めます。

CCとBCCは「誰が読んでいるか」を書く

相手がCCに同僚を入れていれば、全員に返信します。自社側から誰か(CEO、技術担当、日本のパートナー)を加えるときは、名前だけ黙って増やさず、本文で一言触れます。

本件につきまして、弊社の技術担当 佐々木をCCに加えております。

顧客宛てのメールでは、自社の同僚は「さん」も「様」も付けず姓だけで書きます。本社の英語話者が日本語で書くと、ここで「佐々木さん」としてしまいがちです。BCCに移すときもその旨を書きます。複数の顧客を同じCC欄に並べるのは論外です。

速さ:まず受領、回答はそのあと

日本の業務メールでは、早めの「受け取りました」が重んじられます。その日のうちにきちんと答えられないなら、いつまでに答えるかだけを書いた短い一報を先に送ります。

お問い合わせいただき、ありがとうございます。 内容を確認のうえ、10月13日(火)までにあらためてご連絡いたします。

そして、その日付を守ります。つまずきやすいのは時差です。東京の午前10時に届いた問い合わせは、欧州では深夜、米国西海岸では前日の夕方です。日本は一年を通じて日本標準時(UTC+9)で、夏時間はありません。時差が年に2回変わるのは本社側だけです。英語だけの自動返信は受領の一報になりません。「まだ誰も読んでいない」と伝えているのと同じです。

次の一手は、承諾しやすい形で

「ご都合のよい日時を教えてください」や、予約リンクだけで締めるのは避けます。日本の担当者は打ち合わせを受ける前に社内で確認を取ることが多く、具体的な提案のほうが回しやすいからです。日付・曜日・日本時間の時刻で2〜3つの候補を出し、所要時間と参加者も書きます。

つきましては、オンラインにて45分ほどお時間をいただけますでしょうか。 以下の日程でご都合はいかがでしょうか(いずれも日本時間)。 ・10月14日(水)10:00〜 ・10月15日(木)14:00〜 ・10月16日(金)16:00〜

添付は日本語の資料を1枚。何をする製品か、誰が使っているか、料金の考え方、初回の打ち合わせで何をするか。英語のピッチデッキは本国での習慣です。日本の担当者はどのみち上長向けに要約しなければならないので、日本語1枚の要約があれば、それをそのまま転送できます。予約リンクは、日程候補の代わりではなく、そのあとに添える補助としてなら問題ありません。

組み立てると、こうなる

以上をまとめると、問い合わせへの最初の返信は、たとえば次のようになります。

株式会社〇〇 営業企画部 山田 太郎 様 このたびは弊社の決済APIについてお問い合わせいただき、誠にありがとうございます。 Acme Payments で日本市場を担当しております、ジョン・スミスと申します。 ご質問いただいた国内カードブランドへの対応状況について、概要を1枚の資料にまとめて添付いたしました。社内でのご検討にお使いいただけますと幸いです。 詳細につきましては、オンラインにて45分ほどご説明の機会をいただけますでしょうか。 以下の日程でご都合はいかがでしょうか(いずれも日本時間)。 ・10月14日(水)10:00〜 ・10月15日(木)14:00〜 ・10月16日(金)16:00〜 ご都合が合わない場合は、候補日をお知らせいただけましたら調整いたします。 何卒よろしくお願いいたします。

この後に署名が続きます。凝ったところは何もありません。短く、聞かれたことと次に起きることが書いてあり、転送で受け取った上長が、ほかに何も読まなくても理解できる。最初の返信に求められているのは、それだけです。

よくある質問

日本語の問い合わせに英語で返してもよいですか

返せますし、英語で問題ない担当者もいます。ただ、メールは英語が得意とは限らない人にも転送されます。英語で返すなら文を短くし、日本語でのやり取りが可能かどうかも書き添えます。ネイティブが確認した日本語で返すほうが確実です。

最初の返信で「お世話になっております」を使ってもよいですか

初めての相手にも広く使われていて、失礼にはなりません。ただ問い合わせへの最初の返信なら、問い合わせへのお礼から入るほうが自然で、転送された人にも用件が伝わります。「お世話になっております」は2通目からで十分です。

日本からの問い合わせには、どのくらいの速さで返すべきですか

全体の回答に時間がかかっても、日本の営業日のうちに受領の一報を入れるのが望ましいです。いつまでに回答するかを書き、その日付を守ります。

日程調整の予約リンクを送ってもよいですか

補助としてなら問題ありませんが、それだけでは不十分です。先に日本時間の日程候補を2〜3つ出してください。具体的な提案のほうが、担当者が社内で確認して返事をしやすくなります。

この記事の内容の根拠は何ですか

日本のビジネスメールで一般的な慣習をまとめたもので、規則ではなく、会社によって違いがあります。例文の会社名・人名・住所・電話番号はすべて架空のものです。日本の時刻は日本標準時(UTC+9)で、夏時間は採用されていません。